大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和50年(あ)1409号 決定 1977年3月29日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人栗坂諭の上告趣意は、憲法一四条違反をいうが、実質は単なる法令違反の主張であり、弁護人小嶋豊郎の上告趣意(補充上告趣意をも含む。)のうち判例違反をいう点は、所論引用の当裁判所昭和二七年(あ)第六七五五号同二八年五月七日第一小法廷決定・刑集七巻五号九五四頁は、昭和二二年勅令第九号違反被告事件に関し、同勅令二条にいわゆる「婦女に売淫をさせることを内容とする契約」の意義を判示したもので、同条の趣旨が直接又は間接に多かれ少かれ婦女を束縛又は強制して売淫をさせる結果を招来し婦女の個人的自由の伸張を阻害するような行為を処罰することにあるのに対し、売春防止法一〇条は、同法一条の趣旨に照らせば、売春を助長する行為を処罰することを目的とするものであるから、所論引用の判例は、売春防止法一〇条の適用される本件には適切でなく、その余は、事実誤認、量刑不当の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。(売春防止法一〇条にいう「人に売春をさせることを内容とする契約」は、他人に売春をさせることを内容とする契約であれば足り、売春が婦女の自由意思による場合でもこれを含むと解すべきである。)

よって、同法四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 団藤重光 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一 裁判官 岸上康夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例